マメに生きるぞ ~珈琲や 八王子工房~

 

2018年、あけましておめでとうございました。
去年もいろいろ、本当にいろいろありました。今年も激動の一年になりそうですが、宜しくお願い致します。

 

年末年始公私ともバタバタしており、やっと一人の時間を取り戻しかけた1/7のこと。絡まった気持ちをほぐすため、僕は東京都八王子市にやってきた。

目的は子安神社へのお参り。何はともあれ生き延びたことへの感謝の気持ちと、自分らしく生きていくことの祈願……。 初詣というにはちょっと遅すぎるけど、結構人が出ていた。世間も、やっぱりこのあたりから”自分の時間”を始めるのかもしれない。
そして、街を歩く。この日は温かい日差しがとても気持ちよかった。

 

八王子は、ご近所というわけではないが、縁あってときどきお邪魔する街。ここでの思い出も多くなってきた。
あくまで個人的な思いだが、昔、八王子という街に対しては、なんとなくギラギラした若者の街というイメージを持っていた。”王子”という言葉の響きによるものだろうか、ホストが君臨する魔境のような、そんなイメージ。
だが実際の八王子はというと、まあ確かに治安の悪そうな部分もありつつも、ジャンルも大きさも様々なお店が軒を連ねる面白い場所だ。良くも悪くも、人の集まる場所というのはエネルギーがある。子安神社もそうだが、相応の歴史があり、ちょっと下町らしい一面もある。時代が一周回って、ちょっと落ち着いた雰囲気も出てきたような……なんて僕が云うのもおこがましいが。

さて、JR八王子駅の北口から、どこからともなくお正月らしい音楽が流れるユーロードを歩いていくと、超強力な引力を感じた。

引力?
いや、香りだ。
いつも香りが先にやってくる。

そのお店は通り沿いの一等地にあったのだが、もしそれが路地裏にあったとしても、山の中にあったとしても、僕はいつでも見つけてしまうのだ。「White Album Ⅱ」というアニメでふたりのヒロインとの狭間で恋に苦悩する主人公が「俺はきっと見つけてしまう」と呟くのと同じくらい切なくてやりきれないほどに、そういうタチなのだ。
靴先に現れた「珈琲や」という小さな看板から目を挙げると、美しい店舗が目に入った。

~珈琲や 八王子工房~

「珈琲や、とな」
なるほど思い切った店名である。
だが、全く名前負けしていない。
ロースターのイラストがかわいいドアを開くと、店先には、世界約20ヵ国、約30種類の珈琲の”生豆”が並び、そして一層濃くなる香りが僕を出迎える。
「いらっしゃいませ」
嬉しさで立ち尽くす僕の前にスタッフの方が声をかけてくれた。
お話を伺うと、こちらのお店は「喫茶スペースのある珈琲豆屋」とのことで、つまり珈琲豆の販売がメイン。珈琲豆を購入すると、その場で焙煎してくれる。そして、出来上がりを待つ間にドリップコーヒーが一杯サービスされるとのこと。種類よるが、焙煎したての新鮮な珈琲豆200 gと一杯の珈琲を合わせて1000円くらいでなかなかお得感がある。デカフェート(カフェイン抜き)のものや、ロブスタ種など珍しい豆の取り扱いもあり、珈琲好きにはたまらないお店だ。
なお、カフェとしても優等生で、定番のケーキセットに加え、サンドイッチやキーマカレーといった食事メニューまで網羅され、大満足のラインナップである。

ちょうどお昼時だったので食事にしようかとも思ったが、なにはともあれ珈琲亜三昧したい気分が勝った。  今回は、ドリップコーヒーには、「ブラジル ブルボン アマレーロ」、珈琲豆は「ロブスタの木」というものを選択した。珈琲満載の空間も魅力的だが、日差しを浴びたかったのでテラスで頂くことにした。

ブルボンアマレーロは、苦みは少な目で、華やかながら落ち着いた味と香り。どことなく黒糖のような甘みと酸味が感じられる。お供にサービスされたナッツ類の中の素朴な酸味とよく合う。年末年始の飲み会や、お正月に頂く味の濃いおせちでお疲れだった胃と舌を浄化してくれる。ちなみに、アマレーロとは完熟した実の黄色を意味するそうで、どうりで滋味あふれる甘さだ。ごちそうさまでした。

お次はロブスタ。こちらはおうちでエスプレッソにしてみた。
苦い! くぅー、これこれ! ……けど、思ったよりあっさりしているな。おいし。

少々マニアックな話になるが、アカネ科コフィア属の植物であるコーヒーには、アラビカ種、ロブスタ種という二大品種があり、ざっくり云って、アラビカ種は病気に弱いが風味が豊かな高級品、ロブスタ種は病気に強いが独特の強い苦みがありストレートでの飲用はされにくいという特徴がある。

この記事を書いている現在では、アラビカ種とロブスタ種の生産比率は7:3くらいで、ロブスタ種は主にブレンドやインスタントコーヒーなどに使用されている。いわば日陰の存在ともいえるロブスタ種だが、こうやって店先に顔を出してくれるとは嬉しいことだ。ロブスタ種の品質改良が進んでいることもあるが、世間一般的にも珈琲に関する知識が浸透してきたことを示唆しているのかもしれない。

実際、視点を変えればロブスタ種が活躍できる場所はかなりある。ブレンドする割合が10%も超えると、あー、これロブスタだなぁ……と分かってしまうような個性の強い豆だが、その強い苦みを活かしてアイスコーヒーにしてみたり、甘いクリームやケーキと合わせたりしても美味しい。そしてエスプレッソにブレンドするとクレマの立ちが良くなるらしい……実験は大成功だ。

お酒もいいが、やっぱり僕には珈琲だな。

今年も飲むよ!

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