こんばんは。
突然ですが、あなたは大宮について何か知っていますか?
恥ずかしながら、僕は先日まで何も知りませんでした。東北と信越の分岐点であり、埼玉県最大のターミナルである大宮駅は、新幹線で通過こそするものの、そこで立ち止まることはほとんどなく、「サザコーヒー」のカステラを食べるために降りたきり……それにしたところで改札の中である。
東京から約30分。埼玉県。立派な都会。以上。
顔も知らないアパートの隣人のような、近くて遠い、そんな場所。そういう妙な関係の場所たちと、一度きりの人生でどれだけ仲良くなれるだろうか……。そんな僕だったが、昨日ついに、大宮に出かけてきた。
その貴重な動機を与えてくれたのが、最近駅のホームでポスターを見かける、JR東日本主催のイベント「ナポ×ナポスタンプラリー」だ
ああなるほど、上野東京ライン・湘南新宿ラインのカラーリングって、ナポリタンだな……など何気なくポスターを見ていると、どうも沸々と、無性にナポリタンが食べたくなってくる……。紙面いっぱい元気にうねるナポリタンのイラスト。おいしそうな写真。ケチャップが跳ねたら大変そうな白い服と、白い歯を見せてモデルが微笑む。かわいくナポナポってさ……輪切りのピーマンのイヤリングなんかしちゃってあざといし……だが……あれ、いい? いいぞ? ナ、ナポナポ~! ナポナポ~!
とまあ、これは完全にデザインの勝利である。
ところが肝心のスタンプラリーの内容を見てみると、謎が深まる。そして、これもむしろ妙な中毒性がある。横浜のニューグランドホテルと、大宮の伯爵邸の2か所の名物ナポリタンを紹介していのだが……
・スタンプラリーなのに、ポイントはその2か所だけ。
・ナポリタンを注文しなくても良い。
・スタンプを集めて、もらえる景品は「ランチョンマット」だけ。
微妙。
わざわざ出かけるにはあまりにも微妙過ぎる内容だ……。
一応インターネットでイベントの様子を調べてみると、僕と同じように「微妙」との声多し。そしてあまりにも情報が出てこない……。
ということで、これはあえて行くしかないと判断した。
僕は居住地の関係でニューグランドホテルのカフェはときどき行くし、そこのナポリタンは以前食べたことがある(ややお高いが、間違いなく抜群に旨い)ので、今回は伯爵邸が気になるところだ。
しかも伯爵邸のほうは、このスタンプラリー台紙を持っていくと特典が盛りだくさんで、珈琲がサービスされるうえに、「カゴメ 王道の味 ナポリタン」というパスタソースがお土産でもらえるとのこと。太っ腹である。
しかも、なんでもポスターによれば、大宮では鉄道マンが好んでナポリタンを食べたという歴史があり、地元野菜を使用したナポリタンを「大宮ナポリタン」という名物として謳っており、大宮ナポリタン会なる組織も発足しているとか……。実に愉しみである。
そんなわけで、降り立った。
駅前を歩くと、なんだ、これは……。
まずはとにかく、飲食店だらけ。しかもその内容が、
「北海道塩ザンギ 炎 大宮ルミネ店」、「新宿ゴールデン街発 すごい煮干しラーメン 凪 大宮店」、「とんこつラーメン博多風龍 大宮東口駅前店」…築地や三崎の魚に、宮崎の鳥……と、自分がどこにいるのか判らなくなりそうなカオスが押し寄せてくる。よく云えば、日本の美味しいものは何でもそろう! 悪く云えば節操のない……そんな感じだ。期待を不安をない交ぜにしながら数分歩くと、伯爵邸の看板が見えてきた。
ゴクリ。これもなかなかカオスではなかろうか。驚異の24時間営業というのも素晴らしい。深夜の伯爵邸にも興味が湧く……。
奇しくもこの日はハロウィン。伯爵邸を取り巻いて笑っているジャック・オー・ランタンの風船が、はまり過ぎていて、飲み込まれそうだ……
少し遅めの13:00過ぎに訪れたが、伯爵邸の店内は見事な満員。人気ぶりが伺える。内装はとにかくゴージャスで、ビーナスの彫刻や絵画、蛇が漬けられたお酒?の瓶などが置いてある。伯爵! これは紛れもなく伯爵の宴である。
メニューは、喫茶はもちろん、アルコールから、がっつりとした食事系まで豊富で、これもカオスだが、ここは何が何でも大宮ナポリタンを頂く。
お待ちかねのナポリタンはこちら。
とてつもないボリュームだ。昔懐かしいフレンチドレッシングのサラダと、コンソメスープもついてくる。二人掛けのテーブル席だと明らかに載り切らないので、食事をする人は広いテーブル席にかけるのが良いだろう。トレイはそれぞれのお皿の個所にくぼみがある特注のもので、このナポリタンのセットがいかに昔から存在するのかを示唆している。
僕が普段食べるランチの2~2.5倍くらいのボリュームがある……食べきれるだろうか……と一瞬心配になるが、食べ始めてみるとそれは杞憂だった。ばくばくいける。おいしい。
ここのナポリタンは、パスタはちょっと柔らかめ。アルデンテ全盛のこのご時世に、なんとも興味深いナポリタンである。味も濃すぎず、上品でおいしい。具は結構変わっていて、ピーマン×ソーセージではなく、豚肉×イカ×ニラ×カイワレダイコン。食感も風味も独自のナポリタンだ。屋台の焼きそばのようなわくわく感がある。
トッピングにはお馴染みのタバスコ・粉チーズに加え、泡盛に青唐辛子を漬け込んだタバスコも供される。ナポリタンはとにかくたくさんあるので、普段はあまりトッピングを使わない人でも容赦なく遊び心を発揮できる。泡盛タバスコはお酒の香りがなかなかすごいが、このナポリタンにはマッチする。病みつきになる味だ。
食べてる途中で出てきてしまったが、食後の珈琲も十二分に美味しい。
酸味は抑えられ、”豆感”のある味。ブラジルだろうか。水も、そんじょそこらとはちょっと違うと思われる。口当たりがまろやかだ。最後にかけすぎたタバスコで痛めつけた舌を、やさしく癒してくれる。はぁ~食った。
この超絶ナポリタン体験は、セットで800円。もはや驚異というほかあるまい……。これにはきっと、どんな伯爵様もご満悦だろう。パフェなどの他のメニューも気になるが、それはまたの機会だ……。
ちなみに。
食後は氷川神社と大宮公園に寄ってきました。
いやー、いいところだったよ…。